最近話題のLinuxってなんだ?
話題のニュースを追いかけていると、「Linux」という単語に出くわすことがある。たいていがIT関連ニュースなので、意味がわからなくても困らないかもしれない。しかし、実はLinuxは私たちの生活に徐々に浸透して来ている。
例えばNECの携帯電話やソニーのカーナビにLinuxが使われていたり、自治体を中心にパソコンをLinuxに置き換える動きが進んでいる。銀行のシステムがLinuxで作られているなどという話もちらほら出てくるようになった。
このLinuxという代物、いったい何なのであろうか?
そこで今回はちょっと真面目に、Linuxとは何なのか、どんなふうに使われているのかを、解説しようと思う。
まずは「Linux」の読み方だが、一般的に「リナックス」と読まれ、開発者のリーナス・トーバルズ氏の名前にちなんだものだ。トーバルズ氏はフィンランドの大学生だった頃、自分の勉強のためにパソコン用のOSを作り始めた。
「OS」という単語も聞き慣れないかと思うが、OSとはコンピュータに人間が指令を送るためのシステムで、マイクロソフト社のWindowsや、Apple社のMacOS、日本製ではTronなどが有名だ。パソコンや携帯電話で、写真や文書を保存したり開いたり、ボタンやキーボードの制御などを担当している部分がOSと呼ばれる部分だ。OSとは「オペレーティング(操縦)システム」の略である。もしよく分からなければ、機械と人間とを仲立ちする「通訳さん」だと思ってもらいたい。
特にLinuxはこのOSの中でも最も重要な、「カーネル」という部分を担当する。カーネル以外の部分は、実はすでに無料で使える「GNU」というOSがほぼ完成させていた。GNUは誰でも自由に使ったり改造したりできるOSをみんなで作ろうというとしているプロジェクトで、LinuxもこのGNUの一部として機能するように作られていた。GNUも独自のカーネルを開発していたのだが、これが難航し、いまだに完成を見ていない。LinuxはGNUを今すぐ使えるOSにする救世主でもあった。
Linuxは1991年、インターネットを通して世界中に公開された。元々勉強のためのものだったし、GNUの思想に共感するところもあったのだろう。無料で、誰でも改造できるように「ソースコード」という形で配布されていた。ソースコードは人間が読み書きしやすく、よく見れば欠陥やミスも発見できる。そのため企業が作るOSではこれを機密にしてる事が多い。しかしLinuxやGNUの考え方は真逆で、公開してみんなに見てもらった方が欠陥がたくさん見つかり、結果として欠陥の少ないOSが作れると考えている。
実際に、開発状況がすべて見えるようになっていたので、その道のプロたちがこぞって「そこはこれじゃダメだ、こうやるんだ!」「ここはこうしないとやばい」「こんなものも無いのか! じゃあ俺が作る」などと、どんどん開発に参加してくるようになった。そのうちIBM社やシリコングラフィックス社、日本からもNTTなどの大企業も開発に参加するようになり、今では一般企業の作るOSよりも先進的な部分も多い程になってしまった。
パソコン用OSとしてはなかなか普及しないものの、無料で使えることや、好きなように改造できることから、分野によっては広く使われるようになっている。映画「タイタニック」や「スターウォーズ エピソードII」のCGは、Linuxを使って描かれたものだ。ハリウッドで今やLinuxは欠かせないものになっている。日本の新日本製鐵は、20年間稼働させる高炉の制御システムをLinuxを使って自ら開発した。20年もの間サポートしてくれるOSが無かったからだ。Linuxなら自分たちでどうにかできる。インターネットのサーバにも、Linuxはたくさん使われている。ブログサービスなどを安く、あるいは無料で提供できるのは、無料で使えるLinuxの影響も少なくない。消費者にもメリットは大きいというわけだ。
パソコン用としては普及してないとは言ったものの、この分野でも学校や自治体を中心に採用が進んでいる。無料で使えて特定企業の囲い込みの無いLinuxは、公的機関にはうってつけだろう。銀行や企業でもLinuxパソコンを採用する所がちらほら出てくるようになったし、パソコンメーカー最大手のDellもLinuxパソコンを売り出すようになった。政府主導でLinuxパソコンを推進しようとする動きもある。
もしかすると、明日あなたの職場のパソコンも、Linuxになっているかもしれない。