引き取り手のないかわいそうな犬、その理由は…
動物愛護の国、英国には動物のためのレスキューセンターというものがあります。
不幸にもおうちのない動物たちが引き取られるところで、そこから新しいオーナーがついて引き取られていきます。
現在イギリスで一番不運な犬として話題になっていたのが、エロルという名前のボーダーコリーです。
この犬は人間の歳でいうとなんと70年も新しい飼い主を待ち続けているというかわいそうな犬なのです。
なぜそんなにも引き取り手がいなかったというと……
1997年にこのセンターに捨てられたのが、このエロルとその兄弟のウィリアムの2匹でした。
2匹は新しい飼い主が現れるのを待ち続けていましたが、とうとう去年ウィリアムが亡くなってしまい、彼は一人ぼっちになってしまいました。
センターにやってきてから10年にもなりますが、彼が誰か親切な飼い主に引き取られればいいとセンター側は望んでいます。
10年も引き取り手がいなかった理由の一つは、センター側では、2匹の兄弟犬を引き離すことを拒んだためで、大半の人は2匹を一度に引き取ることを躊躇するからです。
兄弟がなくなった今、なんとか引き取り手が現れないかと面倒を見るレスキューホームでは心配をしています。
毎年クリスマスが終わると、プレゼントにもらった犬を面倒見切れないで、こういった場所に引き取られる犬が後を絶たず、今年も他に3匹ほどレスキューで犬が来ているそうです。
Wanted, a loving den for the lion dogよりここまで読むと、10年も引き取り手がないなら、どうして2匹を離して、飼い主を探さなかったのかと考えるのが普通ですが、そこはいかにも英国だなと英国を知る人は思います。
日本でブリーダーをしている人が言ってましたが、犬を購入するときにも国のやり方が見えるのだそうで、アメリカで犬の購入するときには、聞かれることは、
「(お金を)いくら出すか?」ということだそうです。
これがイギリスだと、
「なぜうちに来たんだ?」という質問をされるそうで、売りっぱなしじゃなく、犬がきちんと幸せになるかどうかを確認するという話を聞いたことがあります。
兄弟の犬を引き離さなかったというところを読んで、そんなブリーダーの話を思い出しました。
そもそも引き取り手が無いだけで、一番不運と話題になっちゃう事自体が、英国ならではですけどね。
動物愛護の程度やバランス感覚は文化や視点によって変わるものなので、何が良いかは一概に言えるものではありませんが、それはさておき、このボーダーコリーのエロルに心優しい引き取り手がつくといいですね。
文藝春秋 (2007/07/28)
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