DVDは2度死ぬ──Blu-rayはLD化し、映画はネットの向こう側へ
先日のMacworld Expoで発表された世界一薄いノートパソコンMacBook Airが話題です。しかしモバイル用としては大きすぎること、予備の電池と交換しながら使うといったタフなモバイル環境に対応できないこと等々、モバイル向けノートパソコンとしては欠陥だらけで、ファッション業界向けじゃないかという指摘まで飛び出す始末。
それはそれでいいのかもしれませんが、寿命の見えてきたWindows XPと死んでも使いたくないWindows Vistaとの間に挟まれてMacへの逃げ道を期待していたモバイラーたちを落胆させたことには変わり無いようです。
さてそんな中、同じくMacworld Expoで発表されたApple TVのアップデートに注目する人たちをちらほら見掛けました。
ワーナーのBlu-ray単独支持でBlu-ray vs HD DVDの次世代DVD規格戦争に決着が付いたかと思われた直後のことで、これはひょっとすると「次世代DVD」そのものが要らなくなるんじゃないかと思わせるものです。
これはどういうことなのでしょうか?
まずApple TVとはどういうものなのでしょうか。
1年前に発表されたApple TVですが、パソコンのiTunesと同期して音楽や映像を普通のテレビに繋いで見られる、という機械です。
「え、それだけ?」と思ってしまいますよね。実際その通りで、アップル社の創業者にしてCEOのスティーブ・ジョブズも失敗だったと言っているようです。
ですがここで話は先日のMacworld Expoで発表されたアップデートの内容になります。
Apple TVが、無償アップグレードで映画レンタルに対応値下げや写真機能の強化などもありますが、重要なのは「iTunes Movie Rentals」です。これは次世代DVD同様、高画質(HD)の映像と5.1サラウンドの音声で映画をネット配信するサービスです。
価格は2.99〜4.99ドル、日本円にすると300〜500円程度でしょうか。
このサービスに熱い視線を注いでる人たちがいます。
お二方ともAppleファンのようで、全面的に共感できる話ではないかもしれません。しかしいくつかのヒントがあります。
ところが、iTunesのレンタルは、視聴が終わったらデータファイルが消えます。消えてくれます、といった方がいいかも知れません。これが自分の所有データだったら踏ん切りがつかずにダラダラと保管し続けてしまうと思うのですが、不思議と、レンタルだと思えばサッパリいさぎよく消えてくれるほうが嬉しいよな、と感じたのです。もしまた見たくなったら、もう一回払って見ても計6ドルだし、平均で二回は見ないであろうDVDを6ドルで買うのに比べてもまだ得だよな、と割り切れるぐらいの感覚です。
そう、まずネット配信の映画レンタルなので、返却の必要が無いというメリットがあります。
そしてこの文章にはもうひとつヒントがあります。
もしまた見たくなったら、もう一回払って見ても計6ドルだし、平均で二回は見ないであろうDVDを6ドルで買うのに比べてもまだ得だよな、と割り切れるぐらいの感覚です。
この箇所です。
なんとDVDが6ドル。日本円で600〜800円くらいでしょうか。アメリカではこんな値段で買えてしまうんですね。
日本でDVDを買ったら、洋画でも1000〜2000円します。邦画ならその倍くらいでしょうか。対してApple TVの映画レンタルは1本300〜500円程度。普通のレンタルビデオ店に払うのと変わりません。
要するに日本ではApple TVの価値がアメリカより高いということになるかもしれないわけです。
もちろん配給される映画のラインナップ次第ですけどもね。
もうひとつの記事からも引用してみましょう。
悩ましいのは、Blu-ray陣営の中心にいるソニー。ワーナー・ブラザーズのBlu-ray一本化で一見追い風状態に見えるBlu-ray陣営だが、 IPTVに先にキャズムを超えられてしまったらBlu-rayビジネスは立ち上がる前に沈んでしまう。そんな矛盾を抱えたままでは、Appleとは戦えない。
そう、Blu-rayディスク同様の高画質高音質な映画がDVDを買うより安くいつでもネット配信で見られるようになる。となるとよほど繰り返し見るのでなければネット配信で済んでしまうわけです。
さらに頭が痛いのは、Blu-rayでなくてはいけない理由があんまりない事です。
日常の録画はHDDレコーダーがあればいいですし、レンタルビデオはDVDです。いまだにVHSテープのレンタルもやってるくらいですから、そう簡単にBlue-rayに入れ代わったりはしないでしょう。Blue-rayは何より現行DVDに勝たないと意味が無いわけです。
DVDはプレイステーション2が牽引する形で再生機も広まりましたが、Blu-ray搭載のプレイステーション3は、はっきり言ってしまえばコケてます。
また、DVDの時はVHSに比べて小さく場所を取らない、デジタル化されてて劣化したり擦り切れたりしない、というメリットがありました。DVDに比べて次世代DVDのメリットは画質音質だけです。
要するに、Blu-rayやHD DVDなどの次世代DVDは、過去にあったレーザーディスクのような、一部の高画質を求めるマニアだけが買う代物になるという可能性も高いのではないか、ということです。
実際、マニアでない人はさほど高品質なものを求めません。音質が悪いとされるMP3で大半の人は満足してますし、これまた音質が悪いとされるiPodも多くのユーザーが支持しています。
案外、iPod用の映画くらいで満足されてしまうかもしれません。
そうなると、もはやAppleの独壇場です。iTunes Storeという「支払いと配信」のシステムが整い、iPodとApple TVという「再生の場所」を牛耳ってるのですから。レンタルが成功すればダウンロード販売まで手掛けて行くようになるかもしれません。
日本企業のパナソニックも、Googleと提携してネット対応テレビの開発に着手しています。
今まで数々の企業が挑戦してきた映像のネット配信ですが、いよいよ本命が決まる時が近づいてるのかもしれません。
「配信・再生」の両方をAppleが取るのか、はたまたそれぞれ別の企業が取るのか。競争はあったほうがいいのですが、消費者としては1箇所にまとまっててくれたほうが便利なのが悩ましいですね。
どちらにしても、Apple TVの映画レンタルが日本でも始まったとき、その時こそが本当の「次世代競争」になるでしょう。その勝負の相手はBlue-ray vs HD DVDなどでも、物理メディア vs ネット配信などでもなく、現行DVD vs 次世代陣営になるでしょう。DVDに勝てるのは誰か? ということです。
そしてDVDより便利にできるのは、ネット配信以外ありえないでしょう。保存場所は大容量HDD。一度購入したら何度でもダウンロードできるようにできれば、家にDVDメディアを置く必要もなくなります。
映画はネットの向こう側へ。DVDは死に絶え、次世代でも死ぬことになるわけです。
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