叶えられない女の願い

ある女性がビンをこすっていたら、急に魔人のジーニーが現れました。

女性は驚いて、願いを3つ叶えてもらえるのか尋ねました。

ジーニーは答えました。

「3つの願いというのは本の中の作り話に過ぎず、私は願いを1つ叶えるだけの魔人なんですよ。ということで、あなたの願いは何でしょうか」

女性はまったく躊躇(ちゅうちょ)せずにこう言いました。

「私は中東に平和が欲しいわ

　地図を見てちょうだい。私はこのあたりの国が、いい加減戦い続けるのをやめてもらいたいの。アラブの人たちはユダヤ人やアメリカ人を愛し、その逆にユダヤ人やアメリカ人にもアラブ人を愛してもらいたいの。そうすればきっと世界は調和が生まれて平和が訪れるわ」

ジーニーは地図を見て声を荒げました。

「すみませんがもうちょっと無理のない願いにしてもらえますか。

　これらの国々はもう何千年も戦い続けています。私がビンの中にいたのはたかだか500年で、出てきたばかりの私にそんな大業は無理です。私は優秀ですが、いくらなんでもそこまで優秀ではありません。ちょっと無理なお願いというものです。分別のある他のお願いを考えていただけますか」

女性は考えました。そうして言いました。

「じゃぁ、私は今までこの人って男性にめぐり合ったことがないの。だから男性をお願いしたいわ。

　そうよ、思慮深くて、楽しくて、ロマンチックで、料理好きで、家のお掃除を手伝ってくれて、床上手で、私の家族とうまくやってくれて、スポーツばっかり見ないで、そして浮気もしない人よ。それが私の願いよ、そんないい人をお願いね」

ジーニーはため息をついて言いました。

「仕方ないな……、地図をもう一度見せてくれ。」