空港に10年住んでいる女性
スペインの東、地中海に浮かぶマリョルカ島に位置するパルマ・デ・マリョルカの空港では、猫を連れた女性をよく見かけます。
一見、彼女はフライトを待つ他の旅行者となんら変わりはありません。
3つのスーツケースを押し、たくさんの本と白い猫を連れています。
しかし彼女がチェックインすることはないのです。
この女性の名前はベティーナさんと言います。48歳のドイツ人で、この空港にはもう10年も寝泊りしているといいます。
彼女は無職で家もありません。
トム・ハンクスの「ターミナル」という映画のモデルと言われる、とある男性が書類を盗まれてからパリの空港に18年も住んだ、という話を思わせます。
本名を言わない彼女の話によると、南ドイツに生まれた彼女は10年前にマリョルカに来たそうです。ある男性との関係に終止符を打ち、新しい生活を始めるためにこのスペインの小さな町にやってきました。
最初はウェイトレスなどの小さな仕事をしていましたが、新しい土地での生活はうまくいかず、すぐに無職になってしまいました。
仕事も、家も、お金もなく、仕方なく空港に住み始め、知らない人や知人の親切で食べていってるそうです。
ある友人は週に2回、何か食べるものを持ってきてくれ、ときどき知らない人がお金をくれたりするそうです。
空港ではよく彼女が静かに読書をしているところを見かけることができます。きちんとしたジーンズとトレーナーを着て、服や体はトイレで洗っています。
出発ロビーのいすは彼女のベッドです。そんな生活ですがドイツに帰るよりはいい生活なのだと彼女は言います。
空港の職員たちから人気があり、「頭がよく、思慮があり、決して物乞いではなく、他人に迷惑をかけていない」と職員たちは述べています。
空港の上役たちも、ベティーナの存在を知りながら目をつぶっているといい、誰の迷惑にもなっていないので空港の設備は使ってもお咎めにならないそうです。
日本のホームレス事情からは考えられないような話ですが、実は欧米ではこういった空港などの住人は結構いるのです。
知性があって人柄もよくても急に失職するなど、不幸がやってくることは誰でもあることだと、まわりは同情的なようです。
失業率や格差が関係する話かもしれませんが、彼女を黙認する空港のお偉いさんたちの懐の大きさにも感心するニュースではあります。
German woman spends decade in Palma's airport - The Guardianより
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