色彩の魔術師「アンリ・マティス」の絵画が逆さに展示されるも47日間気づかれず…ニューヨーク近代美術館
野獣派(フォーヴィスム)の代名詞として知られるフランスの画家アンリ・マティス(1869年〜1954年)は、「色彩の魔術師」と謳われる20世紀を代表する巨匠です。
キャリアが長いため写実的な絵から抽象画に近いものまで作風は幅広く、独特の色彩と力強いデッサンで多くの人々を魅了してきました。
そんなマティスのある作品が、1961年にニューヨーク近代美術館に展示されたのですが、なんと47日間も逆さに飾られ、最終日の前日になるまで誰も気づかなかったそうです。
のべ11万6000人もの観客が、最後まで逆さに気づかなかったという作品をご覧ください。
「舟」(1953年)
こちらがニューヨーク近代美術館に47日間、逆さに飾られていたという作品。
たしかにこれは気づかないかも……。
最終日前日になって、ようやくカタログと見比べた観客が気付いたとのことです。さすが巨匠の作品だとありがたみを感じながら見ていた観客を考えると、ちょっと笑える話ですよね。
この絵は実は「切り絵」で、晩年体力の衰えたマティスは線の単純化、色彩の純化を追求した結果、色を塗った紙をハサミで切り貼りすることで表現したと言います。
さて、せっかくなのでマティスを世に知らしめた野獣派(フォーヴィスム)と言われる作品をいくつかご紹介します。
原色を多用した強烈な色彩と激しいタッチは、まさに「色彩の魔術師」と言うべき作品。
緑のすじのあるマティス夫人の肖像(1905年)
妻の印象を色を使って表現したと言われる作品。左右を暖色と寒色で塗り分けることで、冷めた一面と温かみのある一面を併せ持つことを描写しています。
色で誰もが持つ二面性を表現してしまう、その発想からして非凡です。
野獣派の呼び名は、これらの作品群を見た批評家ルイ・ボークセルが「まるで野獣の檻の中にいるようだ」と評したことから命名されています。
当時は写実主義からようやく印象主義の概念が受け入れられたころで、そこへ登場したマティスら野獣派の作風は大きなセンセーションを巻き起こしました。
今見てもインパクトのある作品ですが、当時の常識など、ぶち壊しになるほど強烈だったのでしょうね。
もっともマティス自身は野獣派と呼ばれることを好まず、その後の作品は静かで心地良いものが主体となっています。
Henri Matisse - Wikipedia, the free encyclopedia
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