数え切れない命を救ってきたオーストラリアの天使と呼ばれる男性
オーストラリアのドン・リッチーさん(84歳)と妻のモーヤさんは、2010年のシドニーの栄誉ある市民と呼ばれています。
なぜならば彼の家は、ポート・ジャクソン湾(シドニー港)の崖から通りを一本隔てたところにあり、自殺を図ろうとした無数の人々を救ってきたからです。
この崖は身投げをする人の絶えない自殺の名所として有名な場所で、リッチーさんはただ座ってじっと見ているわけにはいかないと、そして気づいてしまえば救いに行っていると言います。
自治体によると、週に一人は自殺を図る人が出るそうで、安全のために170万ドル(約1.6憶円)のフェンスと作ることも検討しています。
もう50年以上ここに暮らすと言うリッチーさんは、今までに160人以上もの人々を救ってきたそうで、その数も自治体の見積もりに過ぎず、彼自身は数えていないと述べています。
ポート・ジャクソン湾の守護神とみなされている彼の落ち着き払った人柄は、他人を惹き込む力があり、この優しさが自殺を止める一助となっているそうです。
毎朝ベッドから起き上がると小さな二階建ての窓から崖を一望するのが日課で、もし崖に近過ぎるところに人影を発見すると、すぐにその場所へ近づいていくのだそうです。
彼が救った人々の中には健康面や精神面の問題を抱えた人もいると言い、飛び込む人々は所有物を残す人が多く、一度リッチーさんが駆けつけたときには、松葉杖だけが残されていたケースもあったそうです。
若い頃には妻のモーヤさんが警察を呼んでる間にフェンスをよじ登ったり、救助隊とともに体を引き上げるのを手伝ったりしたと言い、そのことで彼自身が危ないことも何度かあったようで、女性を止めようとして一緒に崖から落ちかけたこともありました。
高齢になた現在は距離を置いて、話を聞くつもりでにっこりと暖かい笑顔を向け、紅茶などを勧めてみるそうです。自殺の動機は様々で、笑顔がいつも人を救うわけではないそうですが、小さな親切というのは効果的なのだと語っています。
ある精神科医の話によると、サンフランシスコのゴールデン・ブリッジから自殺した患者のメモに「もし途中でたった一人でも僕に笑顔を向けてくれる人がいたら、ぼくは自殺をやめる」と書いてあったそうです。
また自殺を図る人の多くは死にたいとは考えておらず、ただ苦痛を取り除きたいことから、他人の親切や小さな希望を与えることで助けに繋がる場合もあるようです。
リッチーさんのこういった努力は2006年に認められ、メダルとともに表彰されました。
もちろん助けられなかった人も大勢おり、多くの自殺風景も見てきたというリッチーさんですが、重荷になったことや、苦しみになることはないのだそうです。
初めて見た自殺光景は、もう思い出せないと言います。
まさに救うことだけに注力してきたリッチーさん。本当の意味で天使と言えるのではないでしょうか。
Australian 'angel' saves lives at suicide spot
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