「車椅子が買えません…」目が離せなくなる展開となった掲示板のやりとり
アメリカは国内総生産(GDP)が世界第一位の国でありながら格差は広がる一方で、医療保険に入っていない国民が7人に1人もいるなど、医療制度の崩壊が叫ばれている現状があります。
おちおち病気や怪我も出来ない人が多いのですが、そんな中、アメリカにいる車椅子の青年が掲示板にある投稿をしました。
その内容とその行方が目を見張る展開を見せていたのでご紹介します。
ある男性による最初の投稿
僕は高校1年生のときから、ずっと同じ車椅子を使っています。現在28歳ですがサイズがもう合わなくなっています。座席のクッションは割れてしまい体を少しも支えてくれません。足を載せる台も曲がり、背中の材質も破れています。
僕はプライベート保険に加入しているのですが、それでも保険会社がカバーする分を引いた残額1250ドル(約11万円)でさえ支払えません。一人暮らしなので自力で動けることが重要で、そのため軽いフレームの車椅子が欲しいのですが、軽ければ軽いほど値段も高くなっていきます。カスタマイズしたり自分の気に入る特徴を計算に入れると、新しい車椅子にかかる費用は3000ドル(約26万円)ほどになると思います。
今は背中の負担がつらく、新しい車椅子がどうしても欲しいのです。気に入ったモデルもあって見ているのですが、現在お金がないので買えません。
そこで広告を出すことを考えました。僕の車椅子に広告を貼るので、スポンサーになってくれる方はいないでしょうか。
もしご興味があるならこれが僕の古い車椅子です。一緒に写っている犬は僕のルームメートです。
この投稿に対して、以下のようなやり取りがかわされていました。
・僕自身は金がないので寄付できないが、記事が上に来て誰かが助けてくれるように一票入れておくよ。地域のアドバイザーが支援できるように、どこに住んでいるかを書くといいよ。
(※票数が多いと上部に表示される掲示板システム)
▼ぼくは暑くて湿気の高い、テキサス州のヒューストンにいます。
・もうすぐ仕事がなくなるので寄付できないが、自分も一票入れておく。
・欲しい車椅子のスペックを教えてくれる?うちの父はそういう関係の仕事をしていて、地下室に新しいフレームが転がっているわ。
・目立つようにオレも一票入れたよ。もしインターネットでお金にしようとしてるなら、アイデアとしてあの有名な車椅子のホーキング博士みたいに仮装して、メッセージを流して寄付を募るっていうのはどうだい?
▼笑い転げました…面白いアイデアなので、もしかしたらやるかもしれません。
・同じく車椅子ユーザーとしてアドバイスするよ。僕は今まで4つの車椅子を使って、現在の軽いのを買うのに大きなトラブルはなかったけど、どこの保険に入ってるのかな。控除したあとでそんな高いのを見たことがないので、医療保険も含めて保険を変えるのもいいかも。
▼僕は仕事をしていて年収が18000ドル(約154万円)あるため、低所得向けの保険には入れないんだ。政府の支援するプログラムはほとんど何も出来ない人用になっていて、僕は支援を受ける資格がない。社会的に生産的になればなるほど助けてくれない。でも感謝はしてる。
・あなたに寄付するわ。だから寄付の受け入れ先を作ってちょうだい。私の娘も車椅子だけど、カナダにいて医療保険が使えるので感謝してる。
▼ありがとうございます。僕もカナダに居られればいいと思います。仕事を持っていても生活がやっとで、医療費などがかさみます。とりあえずペイパルのアカウントを作ろうと思います。それでいけるのかな?
・詐欺かもしれんだろう。お前らの金だけどな。
・どこが疑わしいんだい?話を見ている限りは本当だと思う。
・あのミリオン・ピクセル/ミリオン・ダラーサイトのように、1ドットあたり50ドルとか100ドルで広告スペースとして売るといいよ。(参照)
▼おもしろいアイデアですね。いろんなサイズの正方形を車椅子や椅子の後ろに貼るのはどうかな。いけるかな?
・自分の友人も同じことを考えて調べたけれど、車椅子に貼れる材質のものが見つからず、考えついたのがバナーみたいなのを印刷してピンで止めるという方法だった。このアイデアを友人は嫌がったが、もしこれでいいなら君に無料で印刷はするよ。
▼僕の写真もアップロードしておきます。僕は脳性麻痺です。
・うちの娘も脳性麻痺なので苦しさがよくわかる。寄付するよ。がんばって。
・広告を買ってやるぞ、さあ、さっさと受け入れ先を用意するんだ。
▼急に話がいろいろ進んできたので、まずは新しいペイパル・アカウントを作ろうと思っていましたが、もういいやと思い個人のアカウントを使っています。急にPMやコメントが増えてきたので全員に返事を返そうとしていますが、すぐに返せなくてごめんなさい。そしてみなさん助けをありがとうございます。
・君、2枚目の写真が超ワルに見えるよ。
・今までで見た一番セクシーな脳性麻痺者だわ。
・アカウントはどこだい?寄付したい。
・君が詐欺じゃないとどうやって判断すればいい?写真が他人のものでないと、どうやってわかるんだ?
▼僕の個人メールアドレスを添えています。フェイスブックや他のネットワークへのリンクも張っています。友達登録もしますがそれで証明になりますか。
・詐欺師ならソーシャルネットワークサービスで人格を作り上げられるさ。「はい、掲示板へ」と書いたメッセージを持って、今日の新聞か何かの横で車椅子に座ってくれたら一票入れるよ。
・疑り深くて悪いがオレもそれに賛成で、もしかしたら詐欺師が車椅子に座って写真を撮ってるかもしれんだろう。
・オレはそのリスクを負うよ。50ドル送った。
・ペイパルから20ドル送りました。助けとなりますように。
・喜んで寄付します。あなたがいい人だと思うので。十分な額が寄付されるといいと思います。ぜひどうなったのか更新してくださいね。
・80ドル振り込んだぜ。その石器時代の車椅子からとびきりいいのを買えよ。
・小さな広告代理店をやっています。ぜひ広告スペースを買わせてください。現在運動靴のキャンペーンをしていて、もし興味があるならご連絡ください。
・車椅子に運動靴の広告かよ。
・注目は惹くぞ。
・その広告のキャッチにこれはどうだい?「もし歩けるんなら、ついでに走ろうぜ」
・オレのバイクより高いのに驚きだ。助けるよ。
・20ドル送ったよ。がんばれ。
・他のことに寄付したばっかりだったので、10ドルだけ送りました。
▼急に寄付金が400ドルになりました。一人一人に感謝します。本当に奇跡のようです。みんなへの感謝の言葉をとても言い尽くせません。時間はかかっても、全員にお礼を書きます。
・オレもたいがい生活が苦しいが、君に20ドル使うほうが、もう一杯のビールを飲むよりいいかなと思えた。
・1時間分の時給を送ったよ。君のために1時間集中治療室で働いたということだ。がんばれ。
▼1800ドルになってショックを受けています。信じられません。涙がこぼれそうです。みんなに返事を出そうとしています。まだの人は待っててください。骨と筋肉が痛むので、返事が届かない場合は夜になって寝てしまったんだと思ってください。出来るだけ早く返事します。ありがとうございます。
・ちょうど113.63ドルを送ったよ。アメリカの医療保険制度なんてくそくらえだ。ついでに共和党もくそくらえだ。
・9.31ドルを送った。アカウントに入っていた全部だ。だけどそうやって貯まっていく。
・50ドル送りました。
・広告はいらないので寄付しました。
・5歳になる息子が脳性麻痺なので君の強さに敬服するよ。寄付できたらしたいけれど今無職なので出来ない。ところで君が5歳のときは自分の何がおかしいかってのはわかってたかな?自分の息子が幼稚園に入るのでちょっと心配なんだ。
▼不思議と思うでしょうが、全く理解してませんでした。それもほとんど10代後半になるまで。脳性麻痺が何かということはわかっていたし、それが身体に影響していたけれど、このことがどれだけノーマルライフにとって痛烈かを理解していませんでした。
子供のうちは少し早めに頑張らせると、たいていのことはそれほど困難と思わず乗り越えていけます。本当のきつい衝撃がやってくるのは年齢を重ねてからで、それでも高校くらいからでした。幼稚園から中1くらいまでは割とスムーズでした。時々車椅子の質問を受けることくらいです。
僕から息子さんに出来るアドバイスは、イヤなコメントはなかったこととして、無視するようにすることです。たいていの場合は自分が気づくより周りが先に気づきます。それから今の僕があるのは両親が普通の子として育ててくれたからで、何でもさせてくれました。何でもトライさせてあげてください。
・なんだか泣きたい気分だ。
・引っ越し貧乏なので10ドルにした。
・100ドル送ったよ。車椅子が買えなかったら娼婦にでも使ってくれ。
・25ドル送ったよ。オレってすげー。
▼ぼんやりと起きたら朝の2時で、なんてこった……もう送らないでください。すでに3463.17ドルになっていました。僕が望んでいたよりも、夢の車椅子よりも多い額です。こんなことは夢にも考えていませんでした。多くの投稿が毎日流れていくことを知ってるので、馬鹿げていると思いながら、夢を見ながらやったことで、実際に夢がかなうとは思いませんでした。
車椅子を買ったら新しい椅子と一緒に写真を撮ってアップします。本当に今まであったなかで、一番嬉しい出来事でした。とにかくベッドに戻りますが、朝になったら返事も書き始めます。おやすみなさい。
▼朝起きてすぐペイパル・アカウントを閉鎖しました。本当に沢山の人が助けてくれたので感謝です。返事がまだ遅れている人はごめんなさい。家族や友人が週末に来てくれました。
本当に、心から感謝します。
たった1つの投稿がこんな風に盛り上がっていたのですが、目が離せなくなってしまったのは、心が暖まる展開になったからだと思います。
世の中捨てたものじゃないなと思える、とある掲示板でのエピソードでした。
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