「なんて微笑ましい領土争いなんだ!」デンマークとカナダの『ハンス島』をめぐる主張のしかた
領土問題は、国際関係を何かとギクシャクさせるものです。
カナダとデンマークの間でも、100年にわたって「ハンス島」と呼ばれる小さな無人島の領有権が争われてきました。
ところが、両国の主張のしかたが、かなり変わっていると注目を浴びています。
どんな主張なのかというと……
なんと両国の軍隊がたびたびこの島を訪れては、自国の旗を立て、さらに自国のお酒のボトルを置いていくという手法なのです。
デンマークの軍隊が上陸した時にはシュナップスを、カナダの軍隊が上陸したときにはカナディアンウィスキーに置き換えていくとのこと。
「ウィスキー戦争」と呼ばれるこの主張合戦。もともと友好的な国民性と言われる両国なだけに、領地の取り合いもユニークで平和的な方法となるようです。
ハンス島は、グリーンランド(デンマークの自治領)と、カナダのエルズミーア島との間のネアズ海峡に位置します。
デンマークは1815年にはグリーンランドの支配を確立しており、長期にわたって北極地方の存在は明らかにされてきました。
カナダは、16世紀ごろから領有権を保持していたイギリスからの独立プロセスが1867年に始まり、同年にアメリカがロシア帝国からアラスカを購入したことから、イギリス人とアメリカ人のこの地域への興味が強まりました。
(※当時の探検地図はイヌイット族やグリーンランド在住のデンマーク人を頼っており、ハンス島の名前はアメリカ人探検家のハンス・ヘンドリック氏が由来)
しかし1880年に、イギリスが領有権をカナダに移譲した際には、ハンス島は含まれていませんでした。
一方のデンマークも地図にようやく含めることができたのが1920年代と、地図上では面積がたった1.3平方キロメートルであることから、ないがしろにされてきたような小さな点だったのです。
そうした曖昧な歴史があるものの、その位置が国益が生じる可能性のある国際海域にあることから、この奇妙な領有権の主張が続いているそうです。
海外掲示板の意見をご紹介します。
●ちょっと自分もそこに行って、海賊の旗とラム酒を置いてこようと思う。
↑自分は、混乱させるためにロシアの旗とウォッカを置いてこようかと考えた。
↑間違った旗オペレーションか。
↑きっと、そういうプロジェクトをネット掲示板は支援するんだ。寄付を募ってみるといい。
↑「世界の飢饉? いやガンの研究? いやいや野生に海賊のラム、よし寄付するよ」って感じ?
↑そうやって歴史に名前が残るんだ。
●ねえ、じゃあ両国の軍隊が同時に上陸したらどうなるの?
↑第三次世界大戦。
↑きっと2国だけの。
↑2国で旗を振り合うんだよ。いや、冗談じゃなくて本当に。
↑「もっと激しく振れ!」
●カナダ人として、これを解決する1つの方法を考えた。
1.島の所有権を象徴するトロフィーを作る。
2.3つのホッケーのトーナメント戦を2年ごとに行う。
3.優勝者が次のトーナメントまでの島の所有権を有する。
(特記事項)
トロフィーは島の石で作ること。
「ハンス・ロック・カップ」と名付けることを申請。
↑ハンドボールのトーナメントにしてよ。(デンマークはハンドボールの強豪)
●少なくとも土地には手を付けず、そのままにしているのはクールだね。
↑しかも置いていくギフトを念入りにしていくのはどうだい? 最初はボトル。次はグラスにアイスをつけて。そのうち小さなテーブルにテーブルクロスやキャンドル。さらには軍隊が小さなバーで議論する場所を作るんだ。
↑で、そのうちアメリカがやってきてケンカを吹っかけて全部取っていくんだろ?
↑中国がそこは自分のだと言いだすんだよ。
↑島に島を建ててそう主張しだすのさ。
●オレそこに行って、ビックマックとストロベリーシェイク置いてくる。
●もっともカナダ&デンマークらしい出来事だね。
●カナダ人として言うが、これはわれわれの歴史のなかで、最も暗黒で痛烈な論争のひとつなんだ。もしバーでデンマーク人に会ったら、オレは謝らない。
ユーモアさえ感じるこの平和な領有争いに、参加したいとのコメントも目立っていました。
どこの領土の取り合いも、こんな風に穏やかだといいのですけどね。
TIL there is an island which is disputed territory between Canada and Denmark.