モーツァルトのオペラには「あの嫌いな女に歌わせるため」という理由で作られた曲がある
数々の名曲を残したオーストリア生まれの大作曲家、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。
1970年に作曲したオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」第1幕第14番は、高低さの激しい歌になっているのですが……。
そう作曲した理由は、モーツァルトが歌い手の女性をたいそう嫌いだったというものでした。
「コジ・ファン・トゥッテ」はモーツァルトが1790年に作曲したオペラ・ブッファで、正式タイトルは“Cosi fan tutte, ossia La scuola degli amanti”(女はみなこうしたもの、または恋人たちの学校)。
物語は、姉妹の恋人である2人の男が、それぞれの相手の貞節を試すために互いの相手を口説いたら、2人とも心変わりしてしまったという内容。
姉妹のうちの1人フィオルディリージの役を務めたプリマドンナのアドリアーナ・フェラレーゼ・デル・ベーンを、モーツァルトがたいそう嫌っていたのです。
彼女はオペラの台本作家だったロレンツォ・ダ・ポンテの愛人で、その特権や立場から横柄な女性だったようです。
アドリアーナには低音を出すときはあごが下がり、高音を出すときには上がるという特異な癖がありました。
モーツァルトは彼女が歌う曲「岩のように動かず」“Come scoglio”を、とても高い音と低い音が頻繁に交互する曲にしました。
理由は「アドリアーナの頭を、ニワトリのように上下させたかったから」というもの。
実際の曲はこちら。
モーツァルト 《コジ・ファン・トゥッテ》 「岩のように動かず」 ベルガンサ - YouTube
確かに音程の上下が激しいですが、アドリアーナがどれくらい首を上下させたかは当時の人のみ知るというところでしょうか。