「もしも無神論者が地獄に落ちたら…どうなるの?」というお話
無神論者のジャックが亡くなり、驚いたことに着いた先は地獄で、サタンに出迎えられました。
ジャックは嘆きながら言いました。「私の人生は間違っていたのですね、信仰を持たなかったことへの報いをこれから受けるのですか……」
サタンは笑って答えました。「ああ、ここはそう悪くはないよ。ツアーしてあげるから自分で見てみるとよい」
サタンはジャックを連れて、花が咲き誇る緑でいっぱいの野原を通り過ぎ、あちらこちらに点在している家々を訪ねていきました。
「呪われた人々」であるはずの住人はサタンを見るたびに、立ち寄って飲んで話をしてくように招き入れました。サタンも毎回それに応えました。どの家に寄っても、サタンはとても善良そうにしていました。話はおもしろく、歌ったり、冗談を言ったり、すばらしい存在に思えたのです。
日が暮れてジャックが疲れてきたところで、彼がこれから永遠に住む家を案内されることになりました。新居までの途中、巨大な壁の近くを通り過ぎたので「あの後ろには何があるのですか?」と尋ねました。
サタンは「ああ、何もないよ。あれについてはおまえは何も考えなくていい」
ジャックは興味を惹かれましたが、それ以上サタンに質問をするのは自重して、新居までやってきました。
サタンは翌朝に戻ってレクリエーションセンターを案内すると約束して、「おやすみ」を言って帰りました。
その晩、ジャックは自分が置かれたこの奇妙な状況について考え始め、最後にあの巨大な壁のことが気になり始めました。
「サタンが何も教えてくれなかった、あの壁の後ろにはいったい何があるのだろう?」
数分考えると、自分で調べずにはいられなくなりました。呼吸を整えてから夜道を歩いていきました。到着してから手がかりを求めて探していると、壁からあわい光が漏れているところがあり、近づいてみたのです。
そこには穴が開いていて、壁の向こうから光が漏れていました。
ジャックは深く息を吸い込んで、勇気を出して中を覗き込みました。すると見えたものは、これが地獄であろうと想像していた光景そのものでした。
地面から巨大な灼熱の炎が噴出し、恐ろしくもそこには永遠に焼かれて叫びながらもだえ苦しむ魂の姿があり、助けを求めていました。
ジャックはあわてて家に戻り、ひと晩中、静かに涙にむせびました。悪魔が彼の心をもて遊び、希望を与えたあと、あの永遠の絶望の淵に投げ入れるんだと確信したのです。
翌朝になり、現れたサタンがジャックについてくるように言いました。
ジャックは懇願しました。「お願いですから地獄に連れていかないでください、何でもします。お願いですからここに置いてください。永遠に焼かれたくないのです!」
するとサタンは言いました。「いったい何の話をしているんだ? 今日は単に昨日話した通りレクリエーションセンターを案内しようとしているだけだよ」
ジャックは絶叫しました。「絶対にそれはウソです。私はあの巨大な壁の後ろで何が行われているかを見たのですから!!」
サタンは「ああああ、あれを見たのか! 心配するな、あれはおまえ用じゃない。あれはキリスト教徒用の地獄なんだ」
ジャックは「キリスト教徒用? なぜキリスト教徒の地獄はあれなんですか?」
サタンはそれに応えてこう言いました。
「オレにもわからんよ。彼らがあれを希望しているんだ」
教訓:人は信じたいことを求めるもの。